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理念や指導方針

校長挨拶

56期の卒業生を送り出すにあたり、校長としてメッセージを贈ります。

これまでさまざまな場面で皆さんの高校生活には、枕詞に「コロナによって影響を受けた」が使われてきました。そして実際そのとおり、みなさんの高校3年間は私たち教育に携わる人間として本当に心を痛めた時期でもありました。

皆さんが本校の入学試験を受けていた時期、遠い世界の出来事のような形で「COVID-19」という言葉が生まれ、20203月、日本中の生活が一変しました。
皆さんにとって節目となる中学校の卒業式や高校の入学式に直接影響を及ぼしたことは今でも忘れられず、とても残念なことだと思っています。
そして、入学後の北星余市で過ごした3年間は、常にマスクと消毒と検温がついて回りました。長期休み明けの抗原検査と行動制限もありました。学校行事も縮小や時期変更などで対応しなければならないことも多く、なんだか物足りないと感じている人がいるのだろうと考えると、「もう1年くらい高校生活をやってみたらどうですか」と、言ってみたくなったりもします。

そんな冗談はさておき、そのような制限だらけの高校生活の中であっても、学校祭やスポーツ大会では力一杯輝く姿を見せてくれました。こういう関わりや取り組みを求めこの北星余市に来たであろう皆さんの姿を見ていると、世の中の閉塞感に抗うようなパワーや、その機会をできる限り味わってやろうというように見えました。

さて、その閉塞感や制限がついて回ったとはいえ、この高校生活の間に、それぞれどんな成長が図られたでしょう。関わりの濃密さや人の多さに、当初は苦手意識を感じていた人も多かったでしょう。寮生活という親元を離れる経験に不安を抱えていた人もいたでしょう。勉強なんてもう何年もやってこなかったし、座っているだけでも疲れるという人がいたことも覚えています。
反対に、最初からボランティアやクラブ活動、放課後の行事に積極的に参加して、高校生活を満喫していた人もいました。それぞれの時間の積み重ね方は本当に色々で、まさに多様性や個性の塊と言われる北星余市を体現してくれていました。

皆さんは自由な環境の中で、自主的な判断で物事を選んできたはずです。当然、全てが許されていたわけではありませんが、それでも多くのことを選ぶことができたはずです。
全国の学校では、「先生の言うことは聞かなければならない」とか、「学校の決まりは疑問があっても守るのが当たり前」ということが一般的な姿です。そうした疑問を持たない方が楽だし、学校の言うことを聞いていればきっと大きな間違いをしなくて済むからです。そして、学校もそういった関係性の方が楽なのだと思います。労力も時間も使わなくて済むのなら、コストパフォーマンス的にはそちらの方が今の時代に合うように思います。

でも、皆さんがここで過ごしてきた時間は、内面にズカズカと入り込んでくる教師や友人や管理人さんがいたはずです。そんな人たちとの関わりは、余計だと感じることがあったり、ちょっとしたことで指導を受けたり、気持ちを隠しているのになぜか見透かされていたりという、決してスマートとは言えない時間だったことが多いと思います。どちらかというと泥臭い関わりであったり、回り道が繰り返されるような時間だったという印象ではないでしょうか。そういう、非常に時間のかかる教育を皆さんは受けてきたということです。

今、世の中では、できる限り事柄を単純化し、楽に、短時間で結果を出すことが求められる傾向があります。
「5分でわかる」とか、「ファスト映画」とか、「倍速再生」というような、待つことやじっくり向きあうということが敬遠される風潮が強くなっています。
残念ながら社会では二項対立の形ですぐに選択を迫られたり、政治の世界でも国会での審議をおろそかにするようなことも起こっています。大人からそのような姿を見せられると、子どもたちはそれがおかしなことだとは感じなくなってしまうのも無理はありません。

しかし、人や事柄を理解するには、じっくりと時間をかけること、たくさんの機会を経験すること、いろんなタイプと関わることといった、一見面倒臭い様々なことと、そこから逃げたいという気持ちを乗り越えてその場にいることが大切です。嬉しい発見ばかりではなく、うまくいかないこともたくさんあります。「だから」というか、「でも」というか、そういった一つ一つを諦めずに積み重ねてきた皆さんだから、見えたものがあったはずです。友達のちょっとした成長が自分のことのように嬉しかったり、クラスの誰かが何気なく発した言葉に気付かされたり。大きな行事で得られる成長ばかりではなく、日常のふとしたことが自分の糧になっていることも実はたくさんあったことに、もし今気づいていなくても、いつかどこかで気づいてもらえるはずです。
入学前、「青春したい」とか「毎日学校に通う高校生活を送りたい」とか「友だちを作りたい」と言葉にしてくれた人が何人もいました。今、振り返ってどうでしょうか。

思春期に人との関わりを学ぶことが大切だと気づき、その環境に身を置いた皆さんを心から誇りに思います。
成人年齢が18歳となった今、すでに皆さんは社会的には大人として扱われることになります。しかし、これからもまだまだ学びは続きます。決して諦めることなく、人と関わりながら成長を続けてください。

もう一つ、お願いがあります。

僕が担任として卒業生を出すときに生徒達にお願いしていたことです。今この立場にいるので、せっかくの機会を活用させてもらい、皆さんに伝えることにしました。
これから先、ぜひ弱い人の側(がわ)に立てる人になってください。困っている人がいたら、声をかけられる人になってください。勇気のいることですが、その勇気を備えてほしいと思います。

最後に、生徒達を支えてくださった寮下宿の管理人のみなさま。時に厳しく、そして愛情を持って子供達を支えてくださりありがとうございました。
そして、保護者・関係者の皆様。一つの節目であり、新たなスタートの日ではありますが、何より今日の日を迎えることができたことを一緒に喜びたいと思います。
ご卒業、本当におめでとうございます。今後も本校の教育をご支援いただければと思います。
以上を持ちまして、校長の式辞といたします。

2023年3月4日
北星学園余市高等学校 校長 今堀浩

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