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理念や指導方針

校長挨拶

47期卒業生のみなさん、そして保護者、関係者の皆様、本日ここに卒業の日を迎えられますことをお慶び申し上げます。また47期生57名がひとりの遅れもなく全員が一緒にこんにちの卒業を迎えられるめぐみに感謝したいと思います。

 みなさんにとって、この学校での生活は長かったでしょうか?短かったでしょうか?
多くの人が「長い」と感じたのではないでしょうか?

時間の感じ方ほど状況に左右されるものはありません。悩みの多いときはたいていの場合「長い」と感じ、楽しみ・充実しているときは、「短い」と感じるものです。北星余市での生活の場合は、1年生、2年生の時は「長い」と感じ、3年生になると「あっという間」と感じたのではないでしょうか?
 これは先生たちも同じ感覚なのだと思います。さらに卒業後の時間は加速して感じられます。高校までとは違い状況がどんどん変わっていくからです。あっという間に時間が過ぎていくという事は、先の話で言えば充実していたという事になるのかもしれませんが、じつは思わぬ落とし穴があります。

 あっという間に時間が過ぎるというのは、何にもしない安穏とした生活をしているときにも感じるのです。これはいいのか悪いのか、私にはいまだにわからないのですが、私にはこんな事がありました。

 ちょうど高校3年生の時です。受験をひかえ、
勉強の分量が多すぎて、突然やる気が無くなりました。当時発売されたばかりのポータブルカセットデッキの「ウォークマン」を手に入れたのをきっかけに音楽(特にオフコースですが)にはまってしまい、ラジオも深夜まで聞くという生活が始まりました。抜け殻のように学校に行って、まっすぐ帰って机に座って親向けには勉強をしているふりをして、音楽を聴いている。そんな生活で鉛筆を持たない受験生としてあっという間に半年が過ぎていました。まさに感覚はワープでした。目をつぶったら朝になっていたというあの感覚です。
 それでも舐めていたので、共通一次試験という大学に入るための試験をそのまま受けて、どこかの大学には入れるだろうとか思っていました。成績は平均点を大きく下回るものとなりました。結局どこにも受かるわけがなく浪人しました。
 浪人の1年間はとても長く感じました。どこにも所属せず、先がわからないという不安定な状況だったからです。そして単純ながらも大切なことを学びました。「やっただけの結果しか出ない」ということです。

9年間と言えば長いでしょうか?さらにその間無収入で極貧生活をしているとなれば、さらに20年くらいに感じるのではないでしょうか?3学期の始業式の時に、皆さんにある本を読みますと宣言したことがありました。
実際その本を読みました。奇跡のリンゴの木村秋則さんのお話です。木村さんは農薬で健康を害している農家の方が多いことから、無農薬栽培でリンゴを作ろうとします。皮肉なことに農薬をやめた途端ぱたっと、リンゴが実らなくなったそうです。しかも9年間。普通ならまた農薬を使い始めるでしょう。しかも周りの農家からは、農薬をつかわないからお前のところから病気や虫が発生してこっちにも被害がでるということで、村八分になります。家族もつらい思いをします。なんども無農薬をやめようと思ったそうです。
ある日、もう生きているのもつらいので山の中で死のうと思って、どんどん山奥に入っていったところ、自然の木が実をたわわにつけているのに気づくのです。だれも手をかけず、肥料もやらず農薬も当然ないのに・・・。ぜったいに今まで常識とされていたことではない自然の法則があると確信したそうです。
そこから徹底的な観察が始まり、大学の専門の先生でもわからなかったことが次々にわかるようになったのです。そして9年目にリンゴの実が今までとは違う良い品質でできたという話でした。

私たちは便利で、すぐに情報を手に入れられる時代にいきています。しかしそれは自分の時間を使って、自分の頭で考えるという姿勢を奪っているように思います。

どんなに長いと感じても、自分で考えて、さまざまなものに実際に触れて、経験していく事が大切なのだと思います。
みなさんはまさにこの場所でそのような姿勢で生活してきたのではないでしょうか?
 何かをするときに「そのやりかたしかない」という事が世の中にはいっぱいあります。本当にそうなのか?いつも考えられる時間を大切にしてくれる人であってほしいと思います。
 
後ろにご臨席の保護者、また関係者の皆さんこれまでのお支えありがとうございました。そしておねがいです。この卒業生たちの卒業後は大変困難な社会になっているのではないかと危惧しております。これからは指導者、保護者としてではなく、仲間として関わり続けてくだされば幸いです。
さて、本日ここからみなさんは、北星余市ではない広大な社会へと踏み出していきます。47期生にも多くの意義深い物語がこれからも記されていくことをお祈りして、式辞とさせていただきます。
卒業おめでとうございます。

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