学生時代は
人生の夏

2024.07.16 コラム

リヴォルヴ学校教育研究所 理事長

小野村哲

SATOSHI ONOMURA

大学時代、夏のほとんどを富士五湖のひとつ、西湖畔のキャンプ場で過ごしていました。管理人、そしてレクリエーション・リーダーとしてそれなりに忙しい日々を過ごしましたが、振り返れば私の人生の中でもっとも豊かな時間だったかもしれません。
日の出とともに目覚め、さっさと仕事を済ませたら、富士山を眺めながらゆっくり昼食を取ります。午後は子どもたちと植物観察や魚のつかみ取りなどを楽しみ、夜にはキャンプファイヤー。お化け大会では今でも不思議に思う「怪奇現象?」もありました。
困っているお客さんの手伝いをして、ファンレターをもらったこともあります。太平洋戦争後、米軍の物資を闇市で売ってもうけたという方からは、当時の生々しい話を聞かされました。毎年、大勢でやってきた漁師さんたちは、みんなの前でマグロやイカをお刺身にして振る舞ってくれました。様々な人との出会いは、その後の私の生き方を変えたように思います。
とはいっても、本当の私は今でも人見知りです。仕事の上で私を知る人は「そんなことはないでしょう!」と笑うかもしれませんが、人が大勢いる所は今でも大の苦手です。
そんな私がキャンプ場で働くきっかけをつくったのは、大学のサークル活動でした。しかしそれも、自分から進んで入ったわけではありません。「美人がたくさんいる!」という友人に付き合わされて入会はしたもののそれきり顔も見せずにいましたが、「人が足りない。とにかく来てくれ」と言われ、断ることもできずに参加したのが始まりでした。
私は今、人生の秋を過ぎ、冬を迎えようとしています。私は私なりの思いをもって生きてきたつもりですが、一方で何かに導かれるままに生きてきた結果が、今の私です。若い方から見れば「大人もいいところ大人」かもしれませんが、「大きな人」になれたかと言われると「はい」とは言えません。けれど、「まあ、人生はそんなものか」とも思うようになっています。

文:小野村哲

 

プロフィール

小野村哲 | Satoshi Onomura

NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所 理事長・元つくば市教育委員会教育委員。公立中学校に英語教諭として勤務。39歳で退職し、むすびつくばライズ学園を立ち上げ、不登校や学習につまずきがちな子どもたちの支援にあたる。主著に『よめるかける ABC英語れんしゅうちょう』(リヴォルヴ)2006、『イラストと音で覚える読み書きが苦手な子のためのアルファベットワーク』(明治図書)2020他。

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