カメラマン美穂子
表紙写真の裏ばなし

2024.02.29 コラム

写真家

辻田美穂子

MIHOKO TSUJITA

毎年この時期になると「もう卒業?はやくない?」と思うのですが、高校3年間って本当にあっという間ですね。自分が高校生の頃は「1学期ですら一生終わらない!」と毎日嘆いていたのに、今となっては短い貴重な時間をもっと楽しめばよかったと思います。及川くん、奥ちゃん、優佳ちゃんの3人は1年生の頃から積極的に写真に写ってくれていたので、卒業してしまうのがちょっと寂しいですが、卒業前に3人で表紙を飾りたい!と言ってくれたので、お願いすることに。ところが撮影当日、トラブルが発生!この日は3年生を送る会があり、時間がおして次の軽音ライブまで15分しかないとのこと。3人とも軽音部で、出番がすぐくる上に、ライブの前にはホームルームまであるらしい!時間をかけてじっくり撮るつもりが、これはまずい…でも悩んでいる時間もなかったので、できることをやろう!と切り替えて、3人が来たらすぐに撮影できるよう準備にとりかかりました。「撮影場所は階段がいい」と及川くんから提案があったので、3階奥の階段へ。モデル本人が入る前に立ち位置や光の調整をするために、その位置に立つ代役のことを「スタンドイン」といいます。3人が来てくれるのを待っていたら、偶然、去年表紙に写ってくれたさくらちゃんが通りかかったので、一緒にいた入試事務の髙崎さんと一緒にスタンドインをお願いしました。階段を選んだのは、きっと段差に座って撮りたいからなんだろうな…と思いつつ、表紙の横位置構図には合わないので、別の構図を考えます。光の当たり具合、絞りの数値、ピントの調整など、こうして立ち位置に立ってくれるだけで、準備はどんどん進みます。ある程度調整ができた頃に、やっとご本人達の登場です。ステージの間にかけつけてくれるなんて、本当のバンドマンみたい!服の色で立ち位置を決めたり、顔や体の向き、足の位置など最後の微調整をしているうちに、あっという間に制限時間がきてしまいました。ちなみに、階段を選んでくれた理由を聞くと、やはり「撮ってみたい構図があった」ということでしたが、残念ながらそこまでの時間はとれませんでした。「学祭にまた3人で戻ってきて、同じ場所でやってみない?」と提案すると、3人とも「やりたい!」と言ってくれたので、嬉しい約束ができました。これで今年の卒業式は、ちょっとだけ寂しくない…はず(笑)

文・写真:辻田美穂子

 

プロフィール

辻田美穂子 | Mihoko Tsujita

大阪から移住した写真家。北星余市でのたくさんの出会いを通して人生が変わったひとりです。今年の春に余市からせたなに引っ越して子育てしながら、時々赤ちゃんを背負って撮影に出かけています。

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