ボクの宝物

2024.02.29 コラム

北星学園余市高等学校教員

妹尾克利

KATSUTOSHI SEO

長年過ごした北星余市を去る日が近づいている今、目を閉じると、映写機のフィルムが回転し、ここで過ごした日々が次々とスクリーンに映し出される。最も鮮やかに蘇るのは、やっぱり担任をしていた時と、そして放送局や生徒会顧問の時のことだ。学園祭の時に中庭で竪穴式住居を作ったっけ。校内のゴミ箱からペットボトルを1000本集めてペットボトルタワーも作ったっけ。予餞会の担任団の出し物の撮影のために、学年の先生方と猛吹雪の中で熱演し、そのあと風邪をひいたっけ。

生徒会顧問の時は連日遅くまで残って行燈をつくり、夜中に点灯した時には皆で歓喜したっけ。放送局の時は、局員たちと制作したドキュメンタリー映画が、全国規模のコンクールで大臣賞などを受賞し、審査員の大林宣彦監督や高畑勲監督から北星余市の取り組みを高く評価してもらえたことも貴重な経験だった。そして、どんな時も、向こう見ずに突っ走るズボラなボクをフォローするかのように、生徒たちがよく動いてくれていた。彼らの優しさに何度も救われた。

赴任したばかりの頃はまだ若く、指導方針を巡って、生徒の親と衝突したこともよくあったが、結婚して2児の父となり、同じ親の立場になって初めて、あの時知る由もなかった親御さんの気持ちが今になってわかったこともある。当時は自分なりの正義感だけで、親心など想像できていなかったと、全くもって赤面の至りだ。学校を支えてくれているPTA役員の皆さんもいつしかボクと同世代になり、青春時代に流行った音楽やテレビ番組の話などで盛り上がった。最近は授業を持っておらず、生徒たちと接する機会も少ないので、その鬱憤を晴らすべく、学園祭や軽音ライブに出演させてもらっていた。両手では数えきれないほど思い出がいっぱいの19年間、ここで過ごした日々はボクの宝物だ。今までありがとう!

文:妹尾克利/写真:辻田美穂子

 

プロフィール

妹尾克利 | Katsutoshi Seo

北星余市高校27期卒業生。民間企業、NPO勤務などを経て、2005年に数学教員として母校に赴任。2020年に教頭に就任。在職中に大学院で博士号(Ph.D)を取得し、2024年4月より大学教員に転身。

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