北星余市は留学先のアメリカと似てる環境
北星余市は少しづつ受け入れて自分の懐を広げていける環境
地域向けの英会話塾を北星余市の教室で開講

2016.11.28 教育・福祉関係者

英会話塾・ひね塾

伊藤 葉子

Ito Yoko

プロフィール

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大阪出身。 カリフォルニア、ラグナヒルズ高校卒業。 一時帰国後、アーティスト活動の場を求めて ニューヨークに。12年間ニューヨークに滞在。アメリカ教育の根底にある子供の自己を尊重する理念を素晴らしいと 感じつつ、安全な食や自然とふれあう機会が とても高価なニューヨーク暮らしに対する 疑問も感じるようになる。2009年、子供たちにもっと身近に自然を感じて欲しいと思い、夫の故郷である余市 町に移住する事を決断。日本の良さとアメリカの良さを掛け合わせた 教育を理想にひね塾を開いている。

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CONTRIBUTION

北星余市の教育とは?

ーー 北星余市高校の教室を利用して、地域の小学生向けに英語塾を開講しているひね塾。その代表・伊藤先生は、本校の総合講座「世界の文化」も担当してくれています。生徒たち、学校に触れながら、どんなことを感じてくれているのでしょうか。

私は5年前から北星余市高校の空き教室で、小中学生対象に学童型英語教室を開いています。通称「ひね」で、教室の名前は「ひね塾」。高校3年間アメリカ、カリフォルニア留学をして、卒業後数年日本で生活したものの、結局、ニューヨークに渡り、12年程過ごして帰国しました。そんな経歴もあり、4年前から北星高校の総合講座、「世界の文化をのぞいてみよう」で講師もしています。

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学童型英語教室を開いたのは、ただの英語教室じゃなくて、遊んだり、料理したり、絵や工作をして過ごす中で、外国の文化に触れ、生活の中で英語を習得する空間にしたかったからです。更に、色んな人に参加してもらう事で、子供達が沢山の異なる背景の人に慣れ、異文化を受け入れる態勢作りになると、ボランティア参加型にしています。

この教室を始めようと思った当初、私が思う様な事が実現できる場所は、どこで作れるだろう?悩みました。余市教会に相談したところ、北星高校を紹介され、早速連絡し、安河内校長とお話しすることとなりました。この時の話の流れが今思い返してみても、とんとん拍子で、調子が良すぎて、笑ってしまいます。

「こんな場所がつくりたいんです」「ああ、いいですね」「異文化を受け入れられる子が育つ事は、結果的に自分の人生を生きやすくすると思うんです。」「うんうん」「異年齢や、異国籍のボランティアが気軽に参加できる場所にしたい」「高校生もですか?」「もちろんです。」「うちの生徒にも外国に行きたいと言い出す子が多くてね」

なんて話をしているうちに、結局、「でもね」「いや~」といった言葉を全く聞かないまま、多いに賛成して頂いて、検討する事を約束してもらえました。

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実際にスタートすると、想定以上の出来事が沢山起こりました。高校の敷地内で、放課後、小学生が走り回ったり、大きな笑い声を上げたり、時々顔見知りになった高校生に話しかけたり、そんな様子が思った以上に自然だった事。外の公園等で顔を合わせても、お互いにつながる手立ての無かった人同士がこの校内だと安心してつながれるんだなと。そして、中学校に行ってない子の英語のサポートもする事になり、その子達がその後、北星高校の学生になってる事。さらに、北星高校の高校生ボランティアの中には、私の中学生への居場所作りの活動にも時々来てくれ、その他の私がかかわっている余市の子供達対象のボランティア活動にも熱心に参加してくれる子も出てきて、気が付けば、その子は余市の一部の小学生や中学生からとても慕われる存在になっていた事。

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4年前から北星高校で「世界の文化をのぞいてみよう」という講座を持つ事になり、もっと幅広い生徒達と関われる様になりました。この講座では、その年その年集まった生徒の性格や興味の方向性で、世界の文化にどんなアプローチで親しむかを決めます。アフリカやタイや、色々な国の料理を作ってみたり、アメリカの人種差別問題等の映画を観たり、音楽の歴史を探ったり、海外滞在経験者や、海外から来た人と交流する場にしたりと色々。また、講座以外で関わった生徒で、余市やその近辺でしか味わえない体験に関心がある子には、農家のまき割りや稲刈り、子供達とのキャンプ等にと誘ったりもします。今までつながりの無かった人同士がつながる架け橋の一つになりたいと思ってるのです。そして、私も北星の生徒と関わりを持つ事が架け橋となって、他の生徒と知り合えたり、知らなかった世界を教えてもらってます。

私は大阪出身で、新たな関係性を求めて、地元の人間関係から飛び出してアメリカに高校留学しました。高校受験はしませんでした。日本の中学校のルールが理解できず、わかったふりもできず、私の中の何かがおかしいのか、この世の中がおかしいのか、経験も言葉も足りないまま悩んでいた私は、畳み込む様に語られる日本のルールから飛び出す事を選びました。そして、飛び出した先にあったのは、話さないと分からない背景それぞれ違う人たちとの関わりと、だからこそ分かりやすいシンプルなルール、そして、背景が違っても、腹を抱えて笑える共通のポイント。

北星余市高校の様子をうかがっていて、とても似てる環境だと感じました。出身地の違う子供達が集まるので、地元では会えなかった子に会え、方言が違い、習慣が違う、センスが違う。始めは今までと違った環境でとまどうかもしれません。でも、この学校の押しつけの無い、シンプルなルールの中、上っ面を整えて社会で上手くやるコツではなく、正直に素直な思いをぶつけて前に進もうとした時、しっかりと受け入れる先生方や下宿の方、そして元は同じ状況だった、気持ちの良くわかってくれる先輩達のサポートで、それぞれの違いを、はじめは難しくても少しづつ受け入れて自分の懐を広げていける環境が北星余市にはあると思います。

外を知り、許容を広げる事が、生きやすさを作る術だと信じて、これからも北星余市高校で、小学生と中学生と高校生と、色々な文化交流が出来る場を提供し、影響し合い続けたいと思っています。

 

 

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