笑顔とおかし

2023.12.14 コラム

函館圏フリースクールすまいる代表理事

庄司証

AKASHI SHOJI

「庄司さん、これ…みんなで食べてほしいと思って…」。そう言った小学生の手には、きれいな紙に包まれた有名なおかしの箱が握られている。

そういえば、長期休みに入る前に、その子が家族と旅行することが楽しみだと話していた。そんなことを思い出していると、隣で母親が苦笑いをしながら「初めて家族以外のお土産を買ったんです」と、こっそり事情を話してくれた。

 いつも一緒に過ごしているお兄さんお姉さんが、旅行のお土産を持ってくるんだ、と話していたこと。自分も「お土産」を買ってみたいと思っていたこと。そのためにお小遣いをためていたこと。みんなが食べられるようにと吟味に吟味を重ねすぎて、危うく時間に遅れてしまいそうになったこと。

その子は「余計なことを言うな」と言わんばかりに母親を見るが、本気で怒っているわけではなさそうだ。その子は、クラスになじめなくて、とフリースクールの利用を始めた。確かに、みんなでゲームをしていると、ときどき感情があふれてしまうことがあった。そうすると、先輩達が優しくわかりやすく教えてくれるのだ。ゲームの攻略法も、イライラの解消法も。

「毎日、楽しそうにお兄さんお姉さんの話ばかりしてるんですよ」とニコニコしながら話す母親に、その子はついに恥ずかしくなってみんなのところに逃げてしまった。

私はその子に「みんなに声かけられる?」と聞くと、「旅行に行ってきました!みんなで食べてください!」と緊張しながら大きな声を出す。そして、その勢いのまま包装をびりびりと破っていく。

箱を開けると、一つ、また一つとおかしが減っていく。私が「ありがとうね。」というと、みんなも「ありがとう」とその子に声をかける。見ると、何とも言えない甘い笑顔だ。

「子どもを笑顔に」と今から約10年前に始めたフリースクールすまいる。笑顔のそばには「おかし」があった。

文・写真:庄司証

 

プロフィール

庄司証 | Akashi Shoji

(一社)函館圏フリースクールすまいる代表理事。七飯町出身。北海道教育大学大学院卒業後、七飯町のフリースクールを経て、「函館圏フリースクールすまいる」を設立。学生時代から、不登校や引きこもりの進学や相談等の支援を行っている。

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