キュンと
ノスタルジー

2022.12.15 コラム

日本キリスト教団岩内教会伝道師・岩内幼稚園園長

金澤友幸

TOMOYUKI KANAZAWA

「恋」というテーマで執筆依頼をいただいた。「恋愛感情に縛られず、キュンとするものについて書いてほしい」とのことだ。そこで、キュンについて調べてみた。「キュン」とは、「胸が軽く締め付けられるような感情を表現する際によく用いられるオノマトペ的表現」であることが分かった。

いわれてみれば、最近ちょうどキュンを感じた。それは「恋」の感情ではなかった。しかし恋と近い感覚にも思える。それを感じたのは、岩内町の自宅へと車を走らせている最中だった。私は車の中でAmazon Musicのランダム再生を流して聴いていた。その時、不意に昔よく聴いた懐かしい曲が流れて、私は「キュン」としたのだ。そして一瞬にして、その曲をよく聴いていた当時のことを思い出した。この感情は「ノスタルジー」であり、今ふうにいえば、「エモい」という感情なのだろう。

高校生の時、古典の授業で「恋ふ」という単語を習ったことを、ふと思い出した。「恋ふ」には、「人間に恋する」だけでなく、「物や場所、過去を懐かしく思う」という意味がある。大昔の人も、恋愛感情と似たものとして、さまざまな物・場所・時代にエモさを感じて、キュンとしていたのだろうか。

ところで、この気持ちはどんな時に感じやすいのだろうか。一説によると、人生の節目や落ち込んでいる時などに、ノスタルジーを感じやすいといわれている。過去を思い出して、懐かしい気持ちを感じることによって、現在の自分の心と向き合い、ストレスを緩和し、未来へと向かう力を蓄えるのだそうだ。

だとしたら、これを読むあなたもいつの日か、自分の人生が大きく変化した時やつらい時に、「今」の高校生活を思い出し、キュンとする日が来るはずだ。あなたは、この北星余市高校でたくさんの経験をしている。勉強、部活、友人や先生との関わり、毎日の礼拝や讃美歌などで形づくられる「今」の積み重ねは、未来のあなたを励ます糧となる。「今」を、ぜひ大切に過ごしてほしい。

文:金澤友幸/写真:辻田美穂子

 

プロフィール

金澤友幸 | Tomoyuki Kanazawa

大阪府出身の30歳。日本キリスト教団岩内教会伝道師・岩内幼稚園園長。車の免許を25歳で取得。「免許を取りに来るのが遅い」という教習所の教官の小言に、「それは個人の自由だ!」と心の中で強く主張したことがある。

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