作ってわかった母の凄さ

2022.07.19 コラム

49期卒業生

今堀桃花

MOMOKA IMAHORI

小・中学校と昼食は給食でした。私とお弁当の生活が久しぶりに始まったのは高校生の頃です。母の作るお弁当は、食べ盛りの私のリクエストで2段重ねのボリューミーなもの。塩昆布をあえたピーマンと卵焼きが定番のおかずで、気心の知れた友人数名と共に、廊下の隅のほうで集まって食べる日々。何となしに「青春」という言葉が浮かぶような、とても楽しい時間でした。思えば、自分が一緒に過ごしたいと望んだ人と、好きなものを食べられるという経験は、義務教育期間中にはあまりなかったかもしれません。高校時代のお弁当は、私の中でとても楽しい思い出と紐付いています。

それからしばらくの時が経ち、大学を卒業した私は、新卒で入社した会社に通うために一人暮らしを始めました。食費の工面のために自炊を始め、職場で食べるお弁当も自分で作りました。好きなものや前日の晩ごはんのおかずなどを思うままに詰めたお弁当はおいしかったものの、記憶の中の楽しげなものではなく、腹を満たすためだけといった風体でした。自分でお弁当を作った経験を経て、改めて母のお弁当を振り返ると、いかに母がいろんなことを考えてお弁当を作っていたかということを感じます。おいしく、彩り豊かで、満足できる量で、デザートの果物まで。これを週5回用意することは、私にはまだできませんでした。

さて、それからというもの、私は先述の会社で社会の厳しさをこれでもかと味わい、半年を待たず退職。現在は実家で長めの休養期間を過ごしています。再び親元に戻ると、なおさら一つひとつの食事が、どれほど私たちのためを想って作られているのかを感じます。私は、いまだに人のためにそこまでのことをする余裕がありません。いつか、自分のことと同じくらいに人を慮れるようになれるのかな……。お弁当を通して、憧れのような、畏敬のような。そんなことを想いました。

文・絵:今堀桃花

 

プロフィール

今堀桃花 | Momoka Imahori

49期卒業生。絵とハンドメイドがちょっとできます。現在余市町にて絶賛休職中かつ求職中。好きな言葉は「胡乱(うろん)」。

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