「本の紹介」星しんぶん 第9号
[2021年3月発行]

2021.03.06 コラム

2021年3月発行発行

星しんぶん

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約束

あなたは約束したことがありますか? 誰でも約束できるわけではなく、「自立した意志」と「約束を守ろうとする決意」があって初めて、その約束に力が生まれます。とても不思議な力です。約束は、誰かとの間に交わしたり、自分の中だけで決意する時もあります。ときには、無意識に、自分が自分にして、自分でも気がついていない約束も。ともかく、約束すると、その時からあなたの中に約束の力が動き出すのです。それは、あなたを強くし励ますこともあるし、あなたを苦しめる時もあります。大切なことは、約束の力を使って、あなたが何を成し遂げようとしているのかということ。約束には、人を殺すほどの力があります。もしも、あなた自身が、約束の力によって、命の危険を感じたのなら、その約束を果たしたときに「あなたの手元に何が残るのか?」を考えてみてください。約束は、あなたにとって大切なものを手に入れるための手段です。

『人間』

ぶん・え:加古里子
福音館書店/¥1,650

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ふたつの約束

みーちゃん(5歳)は、お母さんに頼まれて、初めてひとりでお買い物にいくことになりました。お母さんとした約束は2つ。「くるまにきをつけることと、おつりをわすれないこと」。なにもかも初めてのことばかりだから、みーちゃんは頭がいっぱい。やることなすこと緊張しっぱなしです。初めてのことっていくつになってもそういうもの。おじさんのぼくも初めてってドキドキしますもん。さて、みーちゃんがしたふたつの約束はどうなったのでしょう?

『はじめてのおつかい』

さく:筒井頼子 /え:林明子
福音館書店/¥990

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新しい出会いと別れ

誰かと一緒に過ごす時間にはいつか終わりがきます。お兄さんにいつも付きまとっていたティモシーが、あることをきっかけに成長して大人になっていく物語。嫌気がさすほど一緒にいたとしても、一緒にいる時間がなくなると、妙な寂しさを感じるものです。いま、その人と一緒にいられることを大切にするってなかなか難しいこと。「ずっと一緒にいよう」なんて野暮な約束よりも、いま出会えていることをどれだけ喜び、楽しめるかってことなのかもしれません。

『おとなになる日』

文:シャーロット・ゾロトウ
絵:ルース・ロンビンス
訳:みらいなな
童話屋/¥1,550

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魔女との約束

春が近づくと、どこか落ち着かない気持ちになります。変化が大きい時期だからかな。この物語の舞台ナルニア国には白い魔女がいて、もうずっと春が来ません。全てを凍らせて動かないように抑え込んでいるみたい。ずっと冬です。ぼくは、冬がとても好きだけど、春が来ない冬は嫌かもなぁ。登場人物のひとりに、兄弟を裏切って白い魔女に身を売るエドマンドという少年がでてきます。「あー、その人についていくのはやめたほうがいいのになぁ」と思っちゃうほど、見事に吸い寄せられていく。まだ自分のことがよくわかっていないときには、自分にないものを持っている人に憧れたり、誰かを裏切ってでも手に入れようとしたりしてしまいがち。その時は気がつかなくても、裏切りの代償は、自分が差し出したものよりもとても大きなものだったりするのです。ときには、自分の力だけでは拭いきれないほどにね。そんなエドマンドにも春はやってきたのでした。続きは、本を手に取ってみてね。

『ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり1』

C.S.ルイス
岩波少年文庫 /¥748

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