学校は映画館、先生は支配人

2018.10.10 コラム

3KG代表

佐々木信

SHIN SASAKI

当時席数がたった29席しかなくて「日本一小さな映画館」と呼ばれていたシアターキノがお気に入り。現在は移転してすっかり小綺麗な映画館になっています。年配のお客さんが中心になった現在からは想像もつきませんが、1990年代のシアターキノは、薄暗くて、怪しい雰囲気に包まれていました。

不健全な若者たちが集まり、文学、音楽、アート、ファッションの匂いが満ちていたんです。LGBTを扱った作品も多く、当時からLGBTは日常。世界にはいろんな人がいるということは映画から学びました。高校生の僕にとってシアターキノは、背伸びして、少し緊張して出かける場所。

シアターキノで初めて観た作品はジム・ジャームッシュ監督の「ナイト・オン・ザ・プラネット」。世界5都市で同時に起こる出来事をオムニバス形式でまとめた作品。今でも大好きな作品です。18歳の誕生日にこの作品を観たことが僕の人生を決定づけている気がします。打ち込めるものも見つからず、勉強にも身が入らず、帰宅部で時間を持て余し気味だった僕は、少し緊張しながらも、安心していられる映画館という場所を見つけ、映画や音楽や文学や美術にのめり込んでいきました。大学に入学すると同時にシアターキノで受付(無給ですが映画は見放題)として働くようになり、その後映写を担当。大学には最小限だけ出席し、ほぼ毎日劇場に出勤し、暗い部屋で映画を上映していました。僕にとっての学校は映画館で、先生は映画館の支配人でした。支配人夫妻を見ながら、「好きなことを本気でやり続ければ、それが仕事になる」ことを学び、今、グラフィックデザイナーとして働き、この星しんぶんを制作しています。

文:佐々木信

 

プロフィール

佐々木信 | SHIN SASAKI

3KG代表。学生時代は札幌のミニシアターで映写技師として勤務。サッポロスマイルや、AIR DOのマスコットキャラクター、ベア・ドゥをデザインしました。

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